俺が一番恐れていたのは無視だった。 気味悪がられて、避けられたらどうしようと、そればかり考えていた。 でも一歌の目には戸惑いの色が見えるだけだ。 家族だから、無視して過ごすなんてできないよな。 そう思いながら階段に足をかける。 けど、結局一段上っただけでその場に停止した。 台所から響く音を背中で聞きながら、深く息をはく。 肩が、自然に震えた。 「……ごめん」 腹の底からしぼるようにして出した声は掠れていた。