「あっちー」
シャツの袖とズボンの裾を捲くりあげた孝太が額の汗をぬぐいながら近づいてくる。
「なにボーっとしてんだよ瑞貴」
笑いながら朝礼台によじのぼって俺の隣にどかっと座る。
まだサッカーに夢中になっている仲間を見ながら「若者は元気だねぇ」などと一番元気なくせにおどけてみせた。
「あ、昨日、サンキューな。沙耶も喜んでたよ」
孝太が思い出したように呟いて、俺は若干イラついた。
「……なんで俺がお前の彼女のお守りしなきゃなんなかったんだよ」
俺の言葉に、孝太は唇をひん曲げる。
「しょーがねぇじゃん。俺の周りじゃ瑞貴が一番頭いいんだもん」