「あぁ? なんだこのガキ――」


男が眉を歪め、その場に剣呑な空気が流れようとした瞬間、目の前に細い体が滑り込んできた。

俺を守るように、両手を顔の前に掲げて男を見上げる一歌。


「ごめんなさい、これ、弟なの」

「……」

「瑞貴、謝んなさい!」


高い声は、俺の身体を素通りしていく。



――弟なの――



そうだ。


――弟。
 

その言葉を吐かれた時点で俺は敗者なんだ。




イラ、つく――