心臓がひっくり返るかと思った。


家の玄関先で重なる影。


一歌が、男と――――



瞬間的に、ぐらり、と胸の底が煮えたぎる。


ガシャン!!


気がついたら傍らの自転車を思い切り蹴り倒していた。



「人ん家の前でサカってんじゃねーよサル!」



最大限の毒を吐きながら家の前に立つ男を力の限り睨みつける。

くるくると髪が渦巻いて、腕や腰にはじゃらじゃらとわけのわかんねーものをぶらさげてる、いかにも頭の軽そうな男。


これが、一歌の男――?