* * * 

 
検査室の予約に、カルテの記入に、造影検査。
 
空いた時間があれば糸結びや、研修医同士で採血の練習をしたりもするけど、基本的に俺たちの仕事は雑用がメインだ。  
 

上級医にはもちろん、看護師にまで使いっぱしりにされることがある。



「杉本先生見なかった?」
 

雑然とした研修医室で声を掛ける。
 
と、安西に腕を差し出しながら南沢が童顔を上げた。



「さっきまでその辺にいたけど――て、いてて、刺してから血管探すなって」
 


シリンジ(注射器)を扱う安西の顔は真剣だが、その手元は心もとない。



「だってお前の、分かりにくいんだもん」

「いてーっ、ぐりぐりすんなよっ」
 


普段あどけない表情の南沢がその顔を苦痛に歪ませていて、思わず頬が引きつる。
 
安西の採血の練習には付き合わない方が身のためらしい。

と、



「杉本先生なら病棟行ったぞ」
 

ソファに仰け反っていた東谷がドアの方を指差した。