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検査室の予約に、カルテの記入に、造影検査。
空いた時間があれば糸結びや、研修医同士で採血の練習をしたりもするけど、基本的に俺たちの仕事は雑用がメインだ。
上級医にはもちろん、看護師にまで使いっぱしりにされることがある。
「杉本先生見なかった?」
雑然とした研修医室で声を掛ける。
と、安西に腕を差し出しながら南沢が童顔を上げた。
「さっきまでその辺にいたけど――て、いてて、刺してから血管探すなって」
シリンジ(注射器)を扱う安西の顔は真剣だが、その手元は心もとない。
「だってお前の、分かりにくいんだもん」
「いてーっ、ぐりぐりすんなよっ」
普段あどけない表情の南沢がその顔を苦痛に歪ませていて、思わず頬が引きつる。
安西の採血の練習には付き合わない方が身のためらしい。
と、
「杉本先生なら病棟行ったぞ」
ソファに仰け反っていた東谷がドアの方を指差した。