「あーやだねーこれだから乙女心のわかんない奴は」
「いやいや、杉本先生は乙女じゃないだろー」
安西が丸い顔を崩してからから笑っている。
空気を読んでるんだか読んでないんだか、一瞬張り詰めそうになった場の雰囲気がふわりと和む。
「運命なんて、そんな不確かなものを信じてたら命がいくつあっても足んないじゃん」
苦笑しながら言った俺に、周りは「まあなー」と相槌を打った。
俺たちは患者の命を預かる。
運命なんかに委ねる暇があるなら、全力を尽くさなければならない。
大事なのは患者自身の体力や精神力。
そして経験を積んだ医者の判断力と確かな腕だけだ。