「返したいと思うなら、お前自身がちゃんと帰ってこい」


 
厳しい表情のまま、父親は言葉を紡いでいく。


「学校を出て、働くようになって、自立して、結婚して……それから孫の顔を見せに、ちゃんと帰ってこい」

「……」


 
ふわふわ浮いていく風船を、かろうじて繋ぎ止めるように。



「子が親に返すってのは、そういうことだ」



 
言葉の糸を俺に結びつける。



 
空に消えていかないように、俺を繋ぎ止める。