「そうか」 


 
父親はほとんど口を出してこないものの、俺が勉強や進学に前向きだと喜ぶ。

 
だからってわけじゃないけれど、昔から勉強だけは自主的にやってきた。


 
いい子で居たかったから、というのもあるかもしれない。

 
 
「学費は、働くようになってから返すから」


 
ほぐれてきた空気に安堵しながら言った瞬間、父親の表情が堅くなった。
 
和室の空気がぴりりと張り詰める。


 
俺の目をじっと見据えながら、


「……返すってなんだ」


 
家の主は静かにつぶやいた。




「返される覚えはない」