父親が寝室に使っている1階の和室には、仏壇が置かれている。
 
写真立ての中で、死んだ母親が笑っていた。


「M学か……。そんな遠くに行かなくても、家から通える距離でいいところがあるんじゃないか?」 


首を振ると、父親は眉をひそめた。


「なんでM学がいいんだ?」

「……行きたい大学の進学率がいいから」


 
そんな俺の言葉に、目を見開く。


「大学?」

 
 
それはタテマエの理由だった。

 
本当はこの家で過ごす自信がないからだけど、口には出せない。
 


 
ふすまの向こうからは、夕食後の片付けをする音が聞こえている。