廊下を引き返し、スニーカーに足を突っ込んで玄関を抜けた。
 
 
曇り空がぱらぱらと雨を落とし始めてる。
 
肌寒さを押しやるように、濡れていくアスファルトを蹴った。



 
声を震わせて、

 
空気を濡らして、

 
一歌は間違いなく泣いていた。



 
だからこそ、納得がいかない。



 
そんなに……


 
泣くぐらい俺を好きだって言うんなら、どうして諦めたりするんだよ。
 



 
一歌の行動は不可解だ。

 
何を望んでいるのかまったく分からない。


 
次の瞬間、エリカの声が脳裏をかすめる。