* * * そっと玄関を開けると、土間にかかとの高い靴があった。 見慣れない、女物の靴。 音を立てないようにスニーカーを脱ぎ廊下を抜ける。 と、リビングの話し声がドア越しに漏れてきた。 「こんなに、誰かを好きになることなんて……きっと、ない……」 それは俺の心を揺さぶる音。 「強いところも、弱いところも、全部……」 一歌の震え声に、心臓が軋む。