聖良が保健室へ運ばれ、その後龍也がずっと機嫌が良かったことで、去年を知っている者はすぐに龍也が何か策を講じたとピンと来た。
去年の運動会で、ちょっと頼りない生徒会長、樋口 誠よりも頼りされていた副会長の龍也が、鉄壁といわれるポーカーフェイスを崩し、イライラと当り散らすように指示を出していた事は、記憶に鮮明に残っている。
滅多な事でポーカーフェイスを崩さない龍也が、あそこまで人前で苛立ちを見せたのは初めてだと、親友の暁と響も驚いたほどだった。
聖良には気の毒だが、今年の運動会もある程度の覚悟をしていた彼らにとって、聖良の保健室監禁(彼らには監禁と感じるらしい)は願っても無い吉報だった。
誰も龍也の八つ当たりを受けることなく無事に行事が終わった事に、全員がほっと胸を撫で下ろしたのは言うまでも無い。
龍也の取った行動は彼自身の為だけでなく、生徒会役員の平穏と運動会無事終了には必要不可欠だったのかもしれない。
天然の聖良に振り回され、嫉妬の日々を過ごす龍也にとっては、悩みは尽きないが…
聖良にとっても、龍也の暴走に翻弄される日々は、それはそれで大変だという事…
そして、密かに龍也の嫉妬に生徒会役員全員が振り回され、頭を抱えている事を…
龍也は気付いていない。
++Fin++