今年は男女混合競技の前に、聖良には熱射病になって保健室へ行ってもらう事にしようと、密かに企んでいる。

もちろん、熱射病になるのは、龍也の熱を受け止めて…という意味だ。

校舎の陰で聖良がフラフラになるほどに濃厚なキスをしている数時間後を思い描き、綺麗な顔には悪魔の笑みが浮んだ。

キスまでの関係だった頃とは違い、彼女の全てを手に入れた今、龍也の嫉妬心は去年の比では無い。

ほんの一瞬すれ違う時に、男の視線が聖良に絡みつくだけで、そいつにどう報復してやろうかと考えてしまう。

底なしの嫉妬心。

これ以上無いほどに溺れている自分に半ば呆れつつも止める事など出来ない。

そんな邪まな龍也の気持ちも知らず、パタパタと駆け回っては生徒会執行部の面々に柔らかな笑みを振りまく聖良。


龍也の嫉妬心に油を注ぐ結果になったのは当然で…。


その瞬間、数時間後の予定が前倒しとなる事が決定した。


「聖良、ちょっと生徒会室へ行って忘れ物を取ってきて欲しいんだけど…。」

「いいですよ。どこにあるんですか?」

疑いも無く天使の笑顔で生徒会室へ駆け出していく聖良の後姿を確認してから、そっと後を追いかけた龍也を見ていた者がいたら、その背中には黒い羽が見えたに違いない。

あるはずも無い忘れ物を捜していた聖良が、いつの間にかやってきてドアに鍵を掛けた龍也に気付き、策に嵌ったと知った時にはもう遅かった。