感情をコントロール出来なかった。



他の男に抱き締められて真っ赤になってるこのはを見たら、もうどうしようもなく腹立たしかった。


(俺のこのはに何しやがる‼)



そんな嫉妬が心を占め気付いたらこのはの手首を掴み、強引に店から連れ去っていた。


途中、このはの友達に咎められたが気にもならなかった。


(このはは俺のモノだ。)




そんな感情しかなかった。



だから、無意識のうちにホテルへと連れ込んでいた。



(ヤバい、俺何やってんだ…。)





我に帰りこのはを見やると、怯えた顔をして部屋の真ん中のラグに座り込んでいた。



(感情をコントロール出来なかったとはいえ、ホテルとか…ラブホとかありえねぇ‼)




ここでさっきまでの俺は何をする気だったんだろう。


(感情のままにこのはを抱こうとしてた…)



そう思っていた時にこのはの消え入りそうな声がした。



「と、トイレに行ってもいい?」




ハッとして顔をあげると、真っ赤になったこのはがモジモジと言う。



「ああ。別にかまわないが。」




なるべく普通になるように返事をする。






(俺は何を考えてるんだ⁉)





立ち上がるこのはがどこかに消えてしまうのでは、と不安に駆られ後を追うように立ち上がる。



トイレを見付けて首を傾げているこのはを見て、


(あ、照明か。)




そう気付いてスイッチを探してやっていたら、振り向いたこのはが叫んだ。


「きゃー‼」



咄嗟に口を掌で塞ぐ。



掌に感じるこのはの唇。


吐息。



いつもと然程かわらない距離感なのに、ふんわりと香るこのはの匂い。




全てに俺の中のオトコが反応する。




(ヤバいだろ⁉何考えてるんだ⁉)





このはを適当に誤魔化して部屋に戻る。





ベッドに腰をかけうな垂れた。





35にもなって何やってるんだ。



そんな状況になってようやく自分の気持がハッキリとした。





そうか。





俺はこのはを女として意識しているから、こんなに自分の感情をコントロール出来ないんだ。




このはが愛しいから。




愛しくて大切で…。




愛しているから。





だから初めてみたいにドキドキして落ち着かないのか。






そう気持が整理されると不思議とドキドキが収まった。






いい年なんだし。



そろそろキモチを固めて、ハッキリしよう。




年貢の納め時だ。



そして彬は逃げるのをやめた。