その答えを聞いたとたんに男の顔つきが変わった。
まるで怒っているかのような、かなしんでいるかのような。
「……助けたる
俺が助けたるから
そんな悲しい顔…せんといて」
男はそう言い、自分のジャケットを奈帆に着せ、夜の町から逃げるように近場のホテルへと連れ込んだ。
奈帆の手をつかみ走った。
その手は奈帆とは正反対に温かく大きい。
奈帆の心はどこか安心していた。
今まで、人の温もりを知らなかったから。
ホテルに着くなり男は浴槽にお湯を溜め、部屋を温かくした。
「女の子はカラダ冷やしたらアカンやろ?それに、そんな格好やとカゼひくから。しかも、冷え性やろ?」
男は冷蔵庫に入ってたビールを飲みながら言う。
男の言ってることはほぼ全部当たっている。
「…ありがとう」
奈帆はくるまりながら言った。
「ありがとうは今言わんでええ。
あとでええよ」
男はそう言うと「コンビニ行ってくるわ」と部屋を出ていった。
奈帆は一人になり不安になってきて涙を流した。
そしていつの間にか寝てしまった。