冷たい雨が雪に変わることなく降り続ける12月。

奈帆は行く宛てもなくただ、じっと座って寒さを耐えていた。

奈帆の目の前を人が行き交い、夜の町の光があふれる。

誰も奈帆に見向きもしない。

奈帆の存在に気づいていないのか、見て見ぬふりなのかは分からない。

寒い。

無意識にもそう思ってしまう寒さだ。

「誰か……助けてよ」

奈帆は目の前を通りすぎてく人々にポツリと言った。

…が、雨の音でかき消されてしまった。

「誰か…」

奈帆は涙をこぼした。

一粒、また一粒と。

泣いてると、忙しく聞こえてた足音の1つが目の前で止まった。

奈帆は気づいていないらしくまだ泣いている。

涙はそう簡単に止まないものだ。

「なんで……泣いてるん?」

奈帆は反射的に声のした方を見ると一人の男が傘もささずに立っていた。

「どないしたん?」

男は優しい口調で奈帆に訪ねる。

「………た…すけ……て」

掠れた声で答えた。