「…ならさ、パフェ食いに行く?」
「え?」
「その、暇なんだろ?付き合えよ。あ…甘いもん…苦手?」
しょぼんとする顔に、断るという選択肢は消えた。
「甘いの大丈夫です…。むしろ好き。」
「……じゃ、ちょっと待ってて。すぐ戻るから!」
「? 分かりました。」

バンッ
「…はぁ…はぁ……。」
息を整えながら赤くなってくる頬を押さえる。
運よく人は居ないみたいで、背をドアに預けた。
「……。」
よく無表情でいる子。
なんだか気になって気がつけばずっと目で追いかけていた。
ただ、遠くから彼女を見るだけで満足して。
少しの些細な変化。
愛が突然聞いてきた。
“夢、あんたあおが好きなの?”
好き?得体の知れないもやもやとしたもの。
その感情の名前すら、俺は知らなかった。
年頃とはいえ、彼女が欲しいとは思わなかった。
ただ単純にあの子が気になる。
それだけ。
だけど、もし。
もし、その感情が好きというものならば。
少しだけ、なんとなくだけど、恋がどういうものなのか分かった気がした。
俺は臆病なだけだったのかもしれない。
少し距離が縮んだ。
ほんの少しだけ、崎波を借りるな。ありがとう、愛。

「お、美味しい…。これ、どうやって作ってるんだろう…。」
「いいなー…抹茶…。」
物欲しそうに見つめる顔にキュンとする。
「あの…食べますか?こんなに沢山はさすがに…。」
春とは言えさすがにお腹も冷えるし。
スプーンで抹茶アイスを掬って白川くんの口に近づける。
「え!?」
「ほら、あーんしてください。」
「う……。」
「(ほうほう…日ごろの成果がでてるわね。)」
白川くんが真っ赤になって挙動不審になってる様子を見て気がついた。
「あ…すみません…つい癖で…。」
「そ、そうなん…。」
「ちょっと!!なにやってんのよ童貞が。ヘタレか!」
「……!?」
「あ。愛、どうしたの?」
彼氏さんはいないみたいで、愛はご機嫌斜めだ。
いつの間に店内に居たんだろう。
何かあったのかな…?