欠伸をしながらなんとなくグラウンドに目を向ける。
「お…野球部頑張ってるなぁ…。」
ランニングをしているらしく、掛け声などが聞こえてくる。
朝から活動している部なんて野球部くらい。
寒いのによくやるなーと思う。
「あ。」
あの人は確か昨日の…。
なんて言う名前だったっけ…?昨日の人だよね。
「白川!ぼさっとしてんな!ボール持って来い!!」
「はい!!」
そうだ、白川だ。下の名前は…忘れたけど。
ん?あれって野球ボール?草むらにあるみたいだけど。どうしてここに…。
「すみませーん!」
「?」
「こっちにボール転がってきませんでしたか?…あ、昨日の…。」
遠くから走ってくる顔に見覚えがあった。
「あ……、どうも。」
「ボール…見なかった?」
「ボール?あ…これ?」
さっき拾ったボールを見せると頷いた。
「じゃ、はい。」
「ん。ありがとう。」
それじゃ。それだけ言うと歩いて行ったと思ったら振り返った。
「急がないと遅刻するんじゃないか?」
時計を確認すると、もうすぐ先生来る時間になっていた。
「えっあ…!で、では!」
急がなきゃ…!
私は無我夢中で走って行った。
「おう、急ぎすぎて転ばないようになー。って女子にしては意外に足早い…。」