「あぁ!馬鹿夢!どこに行ってたの!?せっかく部長に聞いてきたのに!」
「え?俺を探してたの?」
「はあ…。あんたには苦労するわ…。」
やれやれと愛は手を上げた。
あの愛が苦労するって…そんな人居たなんて知らなかった…。
なんだか親しそう。誰なんだろう?
彼氏さんだったりして。そんな訳ないか。
「あおに癒してもらおっと!」
「い!?だ、抱きつかないで!」
「やっぱヤローより女の子よね、うんうん。あお、暴れないのー。」
一人で納得している愛に意味が分からなくなる。
「ちょっ!?やめっ!」
いい抱き心地ーともっとくっつく。
なんなのさー!!
「…………あの…さ、お取り込み中悪いんだけど…。俺の前でそういうの…やめてくれよ。苦手なの知ってるだろ?」
彼は顔を真っ赤にしながら横を向いた。
「……ふっ、童貞にはちょっと刺激が強かったようね。」
「……。」
そう言えば人前だったぁぁああああ!!!!
恥ずかしいどころの話じゃないっ!
思い切り愛と距離をとった。
「…ところで愛。お前は何しにきたんだよ。」
「何って…ちょっとこっち来なさい。あおはそのまま壁に張り付いててね?」
「? 分かった。」
とりあえず本でも読もうと、ベンチに座る。
「な、なんで知って!?」
!?
「ちょっと!静かにしなさいよ!」
数秒して鈍い音と言葉にならない声が聞こえた。
なっ何を話してるんだろう…。
激しく気になる。
ちょっとだけ本から目を出すと、
愛の威圧感を漂わせる笑顔が夢?と呼ばれる彼に向けているのが見え、すぐ本に視線を戻した。
「あお、話は終わったからこっちに来ていいわよ。」
「…うん。」
彼は絶望した顔をしていて、愛はニコニコ笑っている。
数分の間に一体何が…。
「おーい白川!お前いつまでもサボってねえで参加しろ!」
「あ、今行きまーす!!愛と…えっとお前の名前ってなんて言うの?」
「……え?崎波…あおだけど…。」
「じゃ、崎波。二人とも気をつけて帰れよー。」
数回手を振って走って行った。
苗字呼び捨て…?
「まあまあ合格ってところかしら。」
「さて帰ろ…っと。ん?愛、何か言った?」
歩き出していた足を止めて振り返る。
「相変わらずあおは可愛いわねと言ったのよ。」
「え。私普通だよ?」
「そうかしらねー?普通だと思ったこと一度もないわ。なんたって、女の子は皆可愛くなれるんだから。」