「あ、あぁ…なんでもないよ、ゆっくり見て行ってください。」

と、赤ら様な嘘を老人は言った。私は怪しみつつも、とりあえずお目当てのものを探す。時々おじいさんの様子をみるが、かなりわざとらしくチラチラとこちらを疑っていた。

とにかく、私は急いで『小鳥売りのうたた寝』を探す。本棚をはじからはじまで舐め回すように見るがそんなタイトルはなかった。しかし私はあるところで目が止まった。分厚い立派な背表紙などがついてる本たちの間に、薄いホチキスで止めたような紙が肩身狭そうに、でも異質なせいか十分な存在感を放ってそこにあった。
私がその紙の塊に手を伸ばす…


するとおじいさんのゴクリとツバを飲み込む音が聞こえた、ような気がした。
いや、実際はしていないんだけど、なんというか視線が痛いほど背中の方から伝わってくる。
せっかく可愛いらしいお店を見つけたのに、店主はまるでへんてこ。もっと若い可愛らしいお姉さんを想像していたのに…。