加藤が頭角を現したのは、それからすぐのことだった。

元々力があったんだろうけれど、メキメキと力を伸ばし、ついには俺の補佐・係長補佐の成績を抜きかけた。



「加藤に抜かれたら俺は会社を辞めるよ。それか異動を志願するね。」



乾いた笑い混じりに同僚にそう漏らしているのを俺が聞いたのは、本当に偶然のことだった。


咄嗟に、加藤を守らなければいけないと思った。

真に守るべきはどちらもなのに、加藤にばかり加担してしまうのは、もう仕方がない。


それより、加藤だ。


このままじゃ他の奴らにも睨まれかねない。ただでさえ日頃の行いが悪いんだ。

どうするのが最善だ。


そんなの、初めから答えは出てるのに。



「……係長。」

「これは、俺が加藤に劣っているということですか?」

「違う、向こうがお前を求めただけだ。」



係長補佐を他部署に飛ばして、加藤を係長補佐に据えた。