「加藤ちゃん呑むねー!」

「いいねいいね! はいビール!」



不意にそんな声が聞こえて陽萌の方を振り向くと、随分と酔った陽萌がいた。

すると、「俺、今から告白しまっす!」と叫んだ男性社員が、陽萌の肩を抱いて立ち上がった。



「あの野郎…。」

「ちょ、源っ?」



敏の制止も聞かず、立ち上がると渦中へと向かった。



「俺、初めて見たときから、ずっと好きでした! 俺と付き合ってくださいっ。」



そのまま顔を近付ける。

殴り飛ばしたくなる気持ちを抑え切れなかった。


陽萌の腹に腕を回して強く引き寄せ、男性社員を突き飛ばした。



「こういった真似は止めてもらおうか。」



不安は山積みだ。

だが、陽萌はやっと手に入れた、大切な女だ。そうやすやすと渡すものか。



「生渕さん…。」

「何もされてないか。」

「だ、大丈夫です。」

「そうか。行くぞ。」



脇目もふらず、陽萌を連れて宴会場の外に出た。