旅館に戻った後、夕飯まで時間があったため、陽萌とのんびりしようと、部屋を訪ねた。

チャイムを鳴らすと、誰かも確認しないでドアを開ける陽萌。



「旅館だからって、確認しないで開けるな。」



そう言うも、陽萌は綺麗に受け流す。

まったく、俺じゃなかったらどうするつもりだったんだ、コイツは…。



「俺の部屋に来るか、どうせ宴会まであと数時間暇だろ。」



そう言うと、「お風呂入りに行きます!」と現金な陽萌。


俺の部屋に行くと、立ち替わり風呂に入った。上がってから浴衣で2人、テレビを眺めてボーッとしていた。

その間中ずっと考えていたのは、陽萌のことだった。


付き合い始めて、たったの1日。なのに、俺はもう不安になっていた。陽萌の部屋に行く道中、敏の所に寄って、少し不安を漏らしてしまったくらいには不安を感じていた。


時間になって、2人、宴会場へ向かった。

宴会場に着くと、「また2人ー?」と今泉にからかわれた。


酒の席ということもあり、陽萌の側にいたかったが、俺は部長含め、お偉いさんの相手をしなければならず、仕事だと割り切って側を離れた。


それから少しして、ふと陽萌の方を見ると、顔を真っ赤にして酔っぱらっているのが見えた。しかも、どこぞの男に絡まれている。

俺の周りは綺麗所が囲んでいて、身動きが取れそうにない。


まぁ今泉もいるし、公の場だ。何も起こりはしないだろう。

そう高を括っていた。