「好きだ。」

「課長…?」



やっと顔を上げた加藤と、目が合う。



「まだちゃんと、言ってなかったと思ってな。」



やっと、やっと。


言わなくても伝わるだろうなんて、なんて自分勝手な考え。

ちゃんと言葉にして伝えなければ、意味がないというのに。



「課長。私にはあなたが、必要です。側に、いさせてください。」



久々に好きな女が出来て、それも数年越しの片想いで。

動き出しても、曖昧な関係を続け。


やっと、やっと。



翌朝、眠るときにしっかりとこの腕に抱いたはずの加藤がいなくて、あれは夢だったのかと思った。

布団の上で胡坐をかいていると、加藤が戻って来て、呑気に「おはようございます」なんて言う。


夢、じゃなかったんだよな?

陽萌に近づいて、その体を抱き締める。



「あ、あの…?」

「…夢だったかと思った。」



そう言うと、可笑しそうに笑いを漏らす。

思いっ切り睨むも、陽萌はニコニコと笑ったままだ。


俺の負けだ。



どうやったって、俺はコイツには勝てない。

どうやら俺は、とんでもない奴に惚れてしまったようだ。