「…何をしているんだ、俺は。」



その場に座り込んで、先程まで加藤に触れていた右手を握り締めて拳を作る。

その手を額に当てて、深く深呼吸をする。


愛しい。


その言葉が、浮かんでは消える。

そういえば、俺は、ちゃんと伝えたことがあっただろうか。


灰皿を引き寄せて、煙草に火を付ける。それを咥えたまま換気扇の下に行って、換気扇をつけた。

冷房をつけつつ、缶ビールを開ける。


少しして、加藤が風呂から戻って来た。



「随分長かったな。」



赤く上気した頬の加藤り

もしかしたら、加藤も風呂で気を落ち着けていたのかもしれない。



「課長、またま呑むんですか? あと、煙草吸いすぎです。体に悪いですよ。」



なんて捲し立ててから、床に適当に腰を下ろした。

ついつい苦笑が漏れた。



「これがなかったら、お前、とっくに俺に喰われてたぞ。」



そう言うと、加藤は突然笑い出した。

こいつは本当に、よく分からない。


煙草を揉み消すとら残りのビールを一気に飲み干して立ち上がり、加藤の側に寄る。

目の前に胡座をかいて座れば、少し身じろく。