「課長もすごかったですよ、綺麗所に囲まれちゃってー。」



足を投げ出してブラブラとさせる加藤は、仕事中とは打って変わって幼さを感じさせる。

そこがまた、可愛かったりする。


別に、綺麗所に囲まれたって、少しも嬉しくはない。

つい、苦笑が漏れた。



「チヤホヤされるならお前に、がよかったな、俺としては。」



そう言うと、「ふへへ。」と変な笑を漏らす。

照れ笑いかと少し期待したのもつかの間、加藤は一瞬で俺を落とす。



「あのまま誰かお持ち帰りしちゃうのかと思いましたよ。」

「俺がそんな軽い男に見えるか?」

「今までの行いからいくと。」



自分の行動を悔いた瞬間だった。とてもじゃないが、否定はできない。


こんなにも長い間、お前だけを想っているのにな。

そんな言葉は、到底言えない。説得力に欠けるし、言ったところで信じてもらえるとも思えない。


そこでふと、疑問を感じて、加藤に尋ねる。



「お前、どうする?」

「え?」

「今泉の所に行くか?」



コイツはもう、部屋には戻れない。

江藤の相部屋が今泉であることも踏まえ、コイツが行くとしたら今泉の所…だが。


「それとも」と言葉を続ける。

正直、こんな真似はしたくないが。



「俺の部屋に、来るか。」



他の男になんて、渡したくはなかった。