「……酔っ払い。」



そう呟くと、加藤の荷物を持ってこさせて、加藤を立ち上がらせた。


さすがに、抱きつかれたのは初めてだった。なんて威力だ。

まさか一瞬で、枷が外れるなんてな…。



「かちょ…。」

「帰る。誰かタクシー捕まえてきてくれ。」



俺に抱きついたまま、ボーッと俺を眺める加藤。終いには、目を閉じ出した。

幸か不幸か、探してみても今泉の姿はない。



「加藤。」

「ん…。」

「寝るな。」



店の外に出たとき加藤にそう声をかけたものの、それももう無意味だ。

眠ってしまった加藤を支える俺に、タクシーを捕まえようと奮闘する彼女が声をかけてきた。



「加藤さん、どうするんですか?」

「……。」

「きっと誰も、加藤さんの家、知りませんよ。」



何の巡り合わせか、加藤の荷物を持ってきて、かつタクシーを捕まえようとしているのは増田だった。


誰かに任せるなんて、堪ったもんじゃない。あの場にはもう、増田を除けば女性はいない。

こんな選択肢はなかったのに、こうなったらもう、やむ終えないじゃないか。



「…俺が、連れて帰る。」