加藤は加藤で聡いくせに、コイツは変に鈍感だから困る。

いや、鋭くても困るんだが。



「私的には、長じゃなくなったことの方が嫌ですね。」



終いにはそんなことをぬかし始めた。

さすがに驚いたものの、すぐに笑いが込み上げてきて、口許を右手で隠してなんとか凌いだ。


加藤はこういう奴なんだ。

俺はコイツのこういうところが、堪らなく好きだったりする。


会社に戻って車を停め、車から降りたとき、加藤に加藤と今泉の昇格祝いも兼ねた新社員歓迎会の話を聞いた。


「出席、しますよね?」なんてどことなく楽しそうな加藤に少し呆れた。

コイツは…、自分が狙われてるって分かっているのか…? これだから、加藤は目が離せないんだ。



加藤はただでさえ異常なまでに酒に弱いのだ。

接待のときも後が怖いから絶対に加藤には飲ませないようにしている。


何が怖いって、加藤の場合は酔うとやたらと甘えたがる。

それで取引先の奴と関係を持たれたら、いろいろな意味で堪ったもんじゃない。


何より、俺の枷が、外れる。