「今日から課長補佐になります、加藤 陽萌です。よろしくお願いします。」



仕事モードに他人行儀で挨拶してきた加藤。

「あぁ」としか返せなかった。


隣のデスクに加藤がいる。その事実に心なしか嬉しくなってしまう自分が気持ち悪い。



「これ、頼む。」



書類の山を加藤のデスクに乗せる。普通ならかなや厳しい量だ。


それにも関わらず、加藤は「うしっ。」なんて気合いを入れたかと思うと、髪をポニーテールに束ね、眼鏡をかけてパソコンに向かった。

こういう仕事に一生懸命で真っ直ぐなところはすごく良いところだと感じる。


何より、他の奴に比べて処理能力が桁違いに高い。

だからなんだろう。



「加藤。あと10分で出る。用意しとけ。」



こんな無茶ぶりをしつつ準備を始めた俺に、加藤は何も言わず資料を差し出してきた。

見ればこれから取引先に伺うのに必要な資料。


本当、コイツは分かってる。