窓ガラスに大きなヒビ。 「マリア?」 感情の揺れる私を落ち着かせるためにだろうか。 優しく呼びかけてくるユル。 私は伸ばされてくる手を、思いっきり掴んで引き寄せる。 そして抵抗なく引き寄せられたユルの襟を掴んで、息のかかるくらい近くでその端正な顔を見上げる。 「言わないで」 大丈夫。 そう、自分に言い聞かせる。 「…」 目を見開きこちら見るユルにもう一度いう。 「言わないで」 絶対に、言わせない。