「…マリア?」
ユニ様の声…
「可哀想に、一人で泣いて。」
違う。
「ユル…」
いつの間に部屋に入ってきたのだろう。
顔をあげると、ユルの姿がある。
「兄さんだと思った?」
クスクスと悪戯に笑うユル。
「なんで、」
「なんでここにいるのかって?」
言いたいことを代わりに口に出してくれるユルにコクリと頷く。
「それはもちろん兄さんとアリス様が一緒に帰ってきたから今頃マリアは泣いてるんだろうなと思って顔を見に来たんだけど、いらない世話だったかな。…兄さん来たみたいだね?」
嫌味な口調はここに充満する極上の血の匂いのことを言っているのだろう。