昨日よりもっとリアルで、優しい夢。



「立ち止まることばかりを考えてはいけない。」


「お父様…」


いつも通りのお父様。



「進まなくては。何回も教えただろ。進みなさい、世は待ってはくれないぞ。」


何度も口酸っぱく言われてきた。





「足が、震えるんです。足元が真っ暗で、進めない…。」



あれだけ焦がれたお父様を目の前にしても、心は乱れない。


それどころか後ろ向きな言葉を紡いでいるというのに、心はどんどんと落ち着いていく。



「それでも、虚勢でもいいんだ。上に立つものはブレてはいけない。強くありなさい。」


「…遺言、ですか?」


少し驚いた顔をしたお父様が嬉しそうにほほ笑んだ。




「愛してるよ。」



消える寸前に言い残された言葉。





「…はい、私もです。」