「ここは忘れられた存在ですからね」


「忘れられた存在?」


「ええ、まずは中へ入りましょうか」


一体化しているドアをラウ様は開き、私を入れてくれる





「うわ…」


入った瞬間に圧巻される



色とりどりで一貫性のない花たち。我こそが一番だとすべての花たちが我を主張し、咲き誇っている。


綺麗だとか、そんなものでは言い表せない。この花たちは"特別"なのだ。




「凛々しいでしょう?」


ああ、そうだ。凛々しいのだ。そこにあるだけで凛々しい。



綺麗に整えられている形跡もなく、無造作に伸びる弦たち。野に咲く花のような力強さもなく、慣らされ整えられた花のような美しさもない。


ただただ特別で、そこにある。




「でも…」


寂しそう




同じ花がない。


似ても似つかない花ばかりが隣り合っていて、周りは敵ばかり。そんな感じがする。


さっきの庭だって同じ種類の同じ色の花たちが並んでいた。野の花も多くは同じ場所で芽吹いているというのに…