「ラニア様も、悪い人ではないはずなのに…」
ボソッと聞こえてきた声
「ラニア様?」
聞き覚えのある名に思わず反応する。それはたしか…
「…もしかして、声に出してた?」
なんとも、しくじった!というような顔で聞き返される。聞かれては不味かったのだろうか。
「ええ。…確か、大魔王妃、ですよね?」
「まぁそうです。」
「ラニア様がどうかなさったのですか?」
「いえ、大したことでは。ただの独り言です。」
ラウ様の視線が周囲を一括する。周りに聞かれるとまずいということか…
「宿でお聞かせくださいね」
語尾にハートが付きそうなくらいに甘く言い放つと、少し困った顔をしたラウ様だった