「希さんっ」「そういえばですねっ」

とうとう300近くに至った楼狼
龍希は全員を覚えていた

救えた人々

同時に
巻き込んでしまった人々

彼らの笑顔を見る度に
胸が締め付けられる様な錯覚を起こす


彼らは相も変わらず慕ってくれた

龍希が騙した

なんて一言も言わず


希さんと呼び続ける

「――希」

後ろから声がした

すっかり覚えてしまったシトラスの香り


『なぁに?ジロちゃん』
クルリと振り返る彼女の笑顔は明るく輝いていた

幸せそうに