戸野の家の近くにある、近所の公園。


そこのベンチに腰をかけて、30分。
戸野は、両手で顔を押さえて泣いている。


指の間から涙がこぼれてる。



「もう……泣くな…よ。」


声をこらして泣いているのが、見てるだけでツラい。

「…つーか、ごめん。…勝手に部活の用事とか言っちゃって…」


首を横にふる戸野。

「…ごめん。」

もう一度謝ってしまった。


「…ごめんなさい…家あんななの、本当は。…お父さんも半年以上帰ってきてないんです。……お兄さんも、尚美さんに暴力ふるうようになって……」


返す言葉が見つからない。


「……小和田くんには、迷惑かけましたね。」

やっと、顔を見せた。

充血した目に、赤い鼻。


「…俺は…別に、平気。」

「このこと、学校のみんなには言わないで下さい…」

「わかってる。言わねーよ……」

戸野はうなづいて、笑う。


「もうお昼だし、帰ります!」


そうして、ベンチから立った。