「やめて……やめて!!」

戸野が声をあげる。





「あの!!!」



俺は大声を出した。




戸野の兄ちゃんは、殴ろうとした手を下げた。


女は泣き崩れて、その場にしゃがみこむ。


戸野は安心して、涙を流す。


「学校に…あの、学校に用事があって、…部活の…。沙知美さんと行ってきます、ね?」


俺は、戸野に手招きをする。
戸野は少しずつだけど俺の後ろに来た。


リビングを出て、
玄関を出る。






俺が悩んでたことなんて、



ちっちゃかった…。

助けてほしかったのは、戸野だった。