「酒臭いのは仕方ないじゃない!仕事なんだから!」

「仕事なら沙知美にあたんなや!!」

罵声。
戸野は怯えていて、俺にはさっぱり状況が掴めない。

「怒鳴らないでよ!頭痛い…」

「お前が消えろ…」


その言葉に女が、戸野の兄ちゃんのコップを弾いた。

コップは床に落ち、割れた。



「どうして…どうして…あたしの息子なのに。この子の味方をするのっ…」

泣きながら言う。

「お前が嫌いだから。…キモチわりぃんだよ。」

「……ううっ……」


女は戸野を見た。


鋭くて、憎しみに満ちた目。




その瞬間…


戸野の兄ちゃんが、女の胸ぐらを掴んで、手を上に上げ殴ろうとした。