「…慎也…」

こっちを見つめる慎也がいた。
きっと、なんで一緒にいるんだとか思ってるんだろうな。


「戸野さん…探したよ。…みんな待ってる。」

息が途切れてる。

必死で探したんだ。


「そうだよね、ごめんね。」

「戸野が謝ることない。俺が連れ回したんだ。」


慎也の俺を見る目が、いつもと違う。


「悪かったな、慎也。」

そう言って、背中を向けて歩いた。

「小和田くん!」

後ろから戸野が呼んだ。

けど、慎也がそれを止めた。

「みんな待ってるってば!」


帰ろう…花火なんか見てらんねー。

友達に電話をかけた。



家に着いたのが、10時過ぎ。
玄関のドアを開けた。


知らない靴が一足。

男の。

声も聞こえる。


「もうそろそろ戻ってくるんじゃないのか?」

「まだ、大丈夫よ。友達と出かけて行ったし、遅くなるって言ってたから。」

母親の声。


不倫相手だ。
家に来てる。



母親の言葉が胸を刺す。

まるで、俺がいないことを狙ってたかのような言い方。


気持ち悪い…