そのとき携帯が鳴る。

着信は、由貴ちゃんからだった。

「もしもし!」

『もしもし!?沙知美?あんた今どこ!?』

由貴ちゃんの声が耳に響く。

「うんと…今、お好み焼き屋さんの前。」

『かなり離れてるじゃん!…どうしよ、迎えに行こうか?』

「ううん!大丈夫だから。今、知ってる人に会って…花火見るときには、そっち行くね!さっきの場所でいいんだよね?」

『うん…ホント大丈夫?』

「平気だよ。ありがとう。…じゃぁ、また後でね。」


わたしは電話を切る。

「あの、わたしこれで失礼しま…」



「波?」

女の人が小和田くんの名前を言った。

「…後藤…」

小和田くんは少し嫌な顔をして、女の人を見た。

「…来てたんだ。…あたしも友達と…波は?……その子と?」

「あ~うん…友達と…」

「そうなんだ…」

女の人はわたしの方を向いた。

「初めまして、後藤久美です。」

「あ!戸野沙知美です!」

「お前は言わなくていいよ!!」

「せっかくですから…」

「いいから、黙ってろって。」

「…ねぇ、波。あのことなんだけど…ちゃんと、話しよ。電話とかじゃなくて…」

「話たって同じ。」