待って…戸野さんがまだいない!!


「それ本当かよ!」

またいつもの疑いを持つ荒谷は、長谷部に言う。

「ホントだって!信じてよ、荒谷。」

「そしたら、みんな叶ってるっつーの!…なぁ!?」

荒谷が話を振るう。

「…んーうん。」


オレは、恋する男。
長谷部の話を信じている。

そんなことより、

「戸野さんまだ来ないけど…」

「まだ知り合いの人といるんじゃね?」

「……うん。」


花火は、どんどんと打ち上がっていく。

「長谷部、あの花火いつごろなん?」

長谷部に聞いた。

「もうすぐじゃない。ナイヤガラの次らしいから。…ハートの形してるんだって!」

「へぇ~…」

戸野さんは、まだ来ない。
俺は焦ってきた。

どうしても一緒に見たい。

「オレ、やっぱ探してくるわ!!」

頭より先に体が動くってこのことなんだ。

「おい!慎也!?」

後ろで荒谷が叫んだのも聞こえず、オレは戸野さんを探した。


嘘でもいい。
噂でもいい。

ただ、一緒に見るだけで、叶う気がした。