「戸野さん!?波ちゃーん!?」

後ろでおばさんが呼んでる声は聞こえなかった。




「おい!!…おい!戸野!」

やっと戸野に追いつく。

「おま…おまえ、足はえーな。」

息が途切れる。

「家近いの?」

首を横に振りながら、早歩きで進んで行く。

「送るって言ったけどさぁ、どおすんの!?…親に迎えに来てもらえば?」

返事がない。
無言で、歩き続けた。

「…波ちゃーん!」

車の音と明りが見える。


運転席の窓から慎也の母さんが顔を出した。


「おばさん、何してんの?」

「何って、さっき呼んだのよ。でも波ちゃん行っちゃうんだもの。あ、戸野さん!」

「おい、戸野!!」

戸野は振り返る。

「送っていくから乗ってちょうだい。」

「そんな、いいです!大丈夫です!!」

「大丈夫って…家遠いんだろ!乗ってきゃいーじゃん!」

「すいません…お願いします。」


戸野は車に乗った。

顔がいつもと違って、何か思い詰めてるような。
不安な顔をしていた。



家に着く。

戸野が降りて、お辞儀をしていった。

「戸野!…大丈夫?」

なんか心配で、声を掛けてしまった。

少し笑ったような、そんな気がした。