もう10時。

「えー沙知美、帰っちゃうの~?」

「うん。」

「まだいようよ。」

「そうだよ。戸野さんも泊まって行けば?」

「あーでも、家が…」

「もう少しだけでもいいから居てよ~。」

慎也や長谷部が、戸野が帰るのを引き止める。

戸野の携帯が光っている。きっと、電話だ。

「携帯光ってるよ。出れば?」

俺は、わざと聞こえるように言った。

「…さっきから出てねーだろ。何か大事なことかもよ。」

なんで戸野は、家からの電話を拒むのか。
そんなこと気付きもしなかった。

「…あの、でますね。」

戸野は、電話に出て話し始めた。

「うん…ごめんね。……え?ホントに?怪我は?…そっか、わかった。今帰るよ。…もう少し待ってて。」

電話を切る。

「沙知美?」

「…ごめんね、由貴ちゃん。さき帰るね。」

「…そっかぁ。大丈夫なの?迎え。」

「うん!…里山くん、今日は誘ってくれてありがとう。」

「…うん。また、遊ぼうね。」

うなづく戸野。
少し淋しそうな表情の慎也。

「…お邪魔しました!!」

そう言って、戸野は走って行った。

慎也が動く前に俺が動く。


「俺送ってくわ!」

戸野を追いかけた。