敵は俺に気付いて、下を向いて前を通り過ぎようとした。



「戸野沙知美ちゃんだよね?」

動きが止まり、振り向いた。

「俺のこと知ってる?」

「…どなたですか?」

首をかしげ、目をキョロキョロさせて答えた。

「小和田波!あれ~最近、目がよく合うから俺のこと気になってんのかと思ったのに…名前も知らなかったか。」

「あの~…」

「戸野さんって、なんか不思議な感じだよね?…敬語で喋るし、スカートは長めだし、ドジなとこあるし!」

「すいません…何が言いたいのか…」

「付き合ってあげてもいいよ!」

困った顔している。

「戸野さんのこと好きになっちゃったかも。」

コイツにとって初めての告白、初めての彼氏。しかもそんなに顔は悪くない…断る理由が分からない。
これで全て計算通りだ。




「あの、すいません。とても嬉しいんですけど…わたし、あなたのこと知らないし、お付き合いとかは…」



驚いて、少し固まってしまった。


計算失敗…
お前みたいなのに、俺が付き合ってやるって言ってんのにその態度かよ…

「本当、本当ごめんなさい!!…それじゃぁ…」

敵は、帰ろうとした。

負けたくない。
こんなやつに…