「あの!」

彼女に向かって呼ぶ。
振り向いた。

「…はい?」


「あ…い、いえ…人違いでした。」

「…はぁ。」

お辞儀をして歩いて行った。

「沙知美ってば!」

女の友達が戸野ってヤツを呼び止め、一緒に帰っていった。


あの女が、慎也が好きな人。

髪はボサボサで、変な性格っぽいし、完璧理解不能タイプだ。

でもホッした。

積極的なやつじゃない。
だから、奥手の慎也はすぐ諦める。

そう思った。



でもそれが、

マチガイだった…