家に帰ると、玄関先でバッタリ母親に会う。
「…あ、おかえり…」
俺を避けるかのように背を向けて歩いていく。
そんな母親の後ろ姿を見ていたら、昔を思い出した。
父親が早く亡くなって、女一人で俺を育ててきた。
きっとツラかったのに、明るく振る舞って…いっぱい働いて…
でも、いつも夜になると泣いてた母親の背中。
「…あのさ!!」
母親は驚いて振り返る。
話しかけたのは、半年ぶりぐらいだ。
「…あの、さ…まだ、あの人と付き合ってんの?」
躊躇しながら、うなづいた。
今さらだけど、
慎也に言えたことで、
気持ちが軽くなって、
正直になれた気がした。
「…今度会わせてよ…その人に。」
「波…」
照れて頬が真っ赤になる俺。
その言葉が嬉しかったのか、涙を流す母親。