「…だったら、もうすんなよ…自分も相手も傷つけるなんてことしちゃダメだ。」

波は鼻で笑って、言った。

「多分、もうしないよ。ズルイことも、悪い嘘をつくことも…」

「……それだけわかっただけで、もういいや!やっぱ人の気持ちって難しいな!結局、自分のことしかわかんないんだよ。…悲しいけど。」


「わかろうとするだけいいよ。簡単にわかったら…それこそツラいことってあるよ。……そうだ、俺も謝らなきゃ。慎也…ストラップのこと悪かったな。」


ストラップは今は机の引き出しにしまってある。


「あーあれ?気にしない!気にしない!……オレ、戸野さんのこと諦めたんだ。」



「…なんで?」

「どんなにオレが頑張っても…戸野さんには届かない。好きな気持ちが一方通行で……それに、波も…少しは気になってるんでしょ?」


目が泳いだ。
図星だった。


「戸野さんと同じ大学行くっていうのも…」

「そうだったとしたら?」