波を部屋に入れたのはいつぶりだろう…

母さんは驚いていたけど、波にいつものように接していた。



「急に…ごめんな…」

「うん…」


「ずっと言いたかったことがあって……まず、謝る。…ごめんな。」


波は何も言わなかった。


「オレのせいで、おばさんともめたんだろ?」

「…おまえのせいじゃないよ。」


「でも…あんなことなかったら…」

「違うから。前からあの人には腹立つとこもあったし…ちょうどそのときと重なっただけ…」




「そっか……あのさ、オレ初めて人殴ったんだよ。」

「俺も…」

「まだ、許したわけじゃないけど、」

「許せねーことだからね。」

「けど、今は波と話さなきゃいけないと思った。」


「俺も。」

「…後藤のこと。ほんとはツラかった?」


あの日のことを振り返る。


「ツラかった…すごくいいヤツだし、嘘ついてるのが嫌になるぐらい…ほんとにツラかった。」