智衣さんの友達が帰るころには、もう12時をまわってた。


「じゃぁね、沙知美ちゃん。…あなた達二人がうまくいかないと、智衣はあたしと付き合ってくれないみたいなの…だから早くホントの兄妹になってね!」

絵梨さんは耳もとでそう言うと、帰っていった。



食器を洗おうと、キッチンへ行く。

この洗いものを明日にまわすと、尚美さんに怒鳴られてしまう。


「沙知美、いいよ。俺やるから…明日学校だろ?」

苦手だったから気付かなかった。
優しい言葉もあることを。


「洗います。」


2人して食器を洗う。

「ごめんなぁ、起きさせて…千陽は寝た?」

「はい。」


うまく喋れない。
まだどこかに、怖いと思ってる自分がいる。



ここに尚美さんが帰ってきたら、また振出に戻る気がして勇気を出した。


「あの…サッカー、やらないんですか?」

洗う手を止めた。

「…しないよ。嫌いになったから。」


「そう…ですか。わたしは…わたしは!サッカー好きで、す…」

だんだんと声が小さくなっていく。