「それに、サッカーしてるとお兄さんを思い出してしまうから辞めるんだって…あのころから、智衣はあなたのこと大事にしてるの!…お母さんに暴力だって振ってないし、沙知美ちゃんが文句言われないようにって…」

訴えかけるように絵梨さんは言った。

「ごめん…でももう見てられなくて…智衣のことちゃんと見たことある?」


2階から絵梨さんを呼ぶ声がする。返事をして、2階に上がって行った。


ちゃんとなんて見たことなんかない。

お兄ちゃんが死んでから、わたしはずっと、ここの家族だと思ってきてないから…



でも、
思い出してみた。

大好きだったお兄ちゃんがいたときのこと。